タイ地域医療保健研修
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Mycoplasma genitaliumの耐性および薦められる治療について

Mycoplasma genitaliumの耐性が懸念されている。クラミジアと同じ治療であるアジスロマイシン1gの一回投与は効果を示さない可能性がある。ドキシサイクリン100mg1日2回のレジメの治癒率(12-33%)はアジスロマイシン1g1回投与の治癒率(55~83%)に比べ低かった研究報告がある。しかし更に最近のある研究ではアジスロマイシン1g投与の治癒率は60%と低下していた。 M. genitaliumがマクロライドに耐性がある場合はアジスロマイシンの治療には反応しない。アジスロマイシン1g1日1回の治療に失敗した際は、菌はマクロライドに耐性を持ち、性感染症として伝播することが判明している。初日にアジスロマイシン500mgを投与し、その後250mgを4日間使用するTotal5日間のレジメは菌がマクロライドの耐性を持っていない場合には95%の治癒率を示している。またこの5日間のレジメは菌のマクロライド耐性を誘発しない可能性が高い。オフロキサシン200mg 1日2回10日間のレジメは次善策(suboptimal)となる。一つの研究では50%以上除菌に失敗している。菌がニューキノロンの耐性を獲得していることも問題の一つである。Moxifloxacinはin-vitroでは M. genitaliumに対して95%以上の効果を示す。400mg14日のレジメは7日のレジメよりも効果が高かった。Moxifloxacinはまれだが重篤な肝機能障害があるため、治癒失敗例にとっておくべきである。

Curr Opin Infect Dis. 2014 Feb;27(1):68-74.

#少し前の論文ですが、 M. genitaliumの治療について良くまとまっているのでご参照ください。クラミジアよりもPIDに寄与する率が低いとされる M. genitaliumですが、やはりマイコプラズマだけあって、マクロライド耐性が問題になっています。しかも通常クラミジアで用いられるアジスロマイシン1gにより耐性をもったマイコプラズマが増えると治療に難渋するとのこと。ドキシサイクリンも効果が低く、難しいです。先日出たハイリスク群の罹患率の高さと併せてハイリスク群の治療には今後苦慮しそうです。今後も薬剤耐性と併せて注目していきたいと思います。

新生児のpSBIの原因検索、バングラディッシュ、インド、パキスタン

世界で年間50万人以上の新生児が重症の細菌感染症により死亡しているが、その原因の多くは明らかになっていない。著者らは2011年から2014年の期間、南アジアにおいて市中感染による新生児感染症の発生率を調査した。バングラディシュ、インド、パキスタンの5都市においてpopulation-based pregnancy surveillanceでの調査を行った。コミュニティヘルスワーカーが0~59日目までに最大10回訪問した。WHOのpossible Serious bacterial infection(pSBI)の定義を満たす症例と健康な新生児をランダムに選択した。Primary objectiveは感染症の原因の推定とし、感染の原因は血液培養および血液、呼吸器のサンプルをCustom TaqMan Array Cards molecular assayにより同定した。63114の新生児のうち、6022のpSBI症例が同定された。28%に原因の同定が可能で、そのうち16%が細菌、12%がウイルスであった。鼻咽腔、口腔からの同定で、最も多い原因病原体はRSウイルスであった。(5·4, 95% CrI 4·8–6·3 episodes per 1000 livebirths) pSBIにより死亡した新生児のうち原因が同定されたのは46%で、92%は細菌感染であった。血液培養陽性の頻度が高かった細菌は連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌、クレブシエラであった。102の血液培養陽性例のうち83%はペニシリン、アンピシリン、ゲンタマイシンに感受性を認めた。

Lancet. 2018 Jul 14;392(10142):145-159.

#敗血症の原因検索の感度を上げるために培養検査に加え、遺伝子的に解析する方法は最近増えてきています。ウイルスの同定も詳細に行っており興味深いです。pSBIによる死亡児の原因の半分は同定されておらず、何が原因なのでしょうか。真菌?原虫?未知のウイルス??

耐性菌が多いとされる国々ですが、抗菌薬の感受性は悪くないことに驚きました。

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マヒドン大学熱帯医学短期研修の講義を中心に、熱帯医学、渡航医学、感染症に関する動画や、マラリアや消化管寄生虫クイズなど、わかりやすい教材で効率的に学習できます!以下、eラーニングの一部です。
※GMSeラーニングは、会員限定のコンテンツです。

1)マラリア鑑別のポイント
2)消化管寄生虫症 鑑別
3)マヒドン大学熱帯医学部コース説明 等

サンプル映像は、2017年マヒドン大学熱帯医学短期研修
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